『BLUE GIANT』の世界観に魅せられて〜原作コミック・映画・サントラ・小説〜

アメリカの大地を旅する
『BLUE GIANT EXPLORER 』
石塚真一/著(小学館)

こんにちは、新緑の美しい季節いかがお過ごしでしょうか。
4月はじめにこのブログで映画『BLUE GIANT』を観た感動を綴ったのですが、その後も伝えたいことがどんどん膨らんでいます。そこで改めて、原作コミック、映画、サントラ、小説と世界が広がっていく『BLUE GIANT』の魅力について追記しました。内容が重複する部分もありますが、お付き合いくださると嬉しいです。

目次

原作コミック

『BLUE GIANT』は、ジャズに心打たれた仙台の高校生・宮本 大がテナーサックスを掲げて日本から世界へ飛び出す 石塚真一先生の長編コミックで、現在もアメリカ編 『BLUE GIANT EXPLORER』が小学館ビッグコミックで連載中。とにかく熱いストーリーでマスターも私も夢中になり、ホコトの本棚に日本を舞台にした『BLUE GIANT』1〜10巻と欧州編『BLUE GIANT SUPREME』1〜8巻までを並べていたのを記憶されている方もいらっしゃると思います。(ちなみにマスターは同じく石塚先生の山岳漫画『岳』の大ファンでもあります。)

『本のあるカフェホコト』
2018.5~2022.1
メイン本棚とカウンター席
音楽関連の棚には
『BLUE GIANT』『ピアノの森』などを
並べていました

カフェ閉店の際に一度お客さまの元へ旅立ちましたので、今また1巻から買い揃えて楽しんでいるところ。映画では18歳の主人公3人が東京で出会い、JASSというバンドを結成していく話を軸に展開しますが、コミックには周囲で支える大人たちも丁寧に描かれていて、これまたじわりと泣かせるのです。普通の人々の日常の中で垣間見る熱い思いに触れたくて、何度でも手に取りたくなる作品です。登場人物がインタビュー形式で当時のことを振り返るシーンが映画で度々見られましたが、これは原作コミックから引き継いだスタイルです。

『BLUE GIANT』1〜3巻
石塚真一/著(小学館)
書店フェアでコミックスを買うともらえる
レコード風コースターを2枚ゲット

映画と音楽

今回の映画化ではなんとあのジャズピアニスト上原ひろみさんが音楽作りから演奏までのすべて担当ということで、約3分の1がライブシーンという正真正銘の音楽映画となっています。上原ひろみさんについては音楽ファンでなくともその存在を知らない人はいないと思いますが、略歴は以下のとおり。

1979年静岡県浜松市生まれ。6歳よりピアノを始め、同時にヤマハ音楽教室で作曲を学ぶ。17歳の時、チック・コリアと共演。その後、バークリー音楽院に進み、在学中に世界デビュー。毎年、世界を舞台にツアーを続けながら多くのアーティストとの共演も果たしている。

詳しくは公式ホームページをご覧ください→ https://www.hiromiuehara.com/?ima=0000


上原さんと言えば髪をアップにしてエネルギッシュに演奏する姿がまず思い浮かぶのですが、インタビューなどを拝見するととても物静かで落ち着いた印象の方です。ここではメロディアスで繊細な『Blackbird』(ビートルズのカバー曲/作詞・作曲ポール・マッカートニー)を紹介させていただきます。

映画の話に戻りますと、最初に『BLUE GIANT』を劇場で観た時は冒頭のテナーサックスが鳴ったところから目頭が熱くなり、終わりまで涙が途切れなくて困るほどでした。3日後に2回目に行き、ようやく少し落ち着いて楽しむことができましたがやはり感動は止まらず。さらに一週間後、3回目を観に行くという自分としては異例の行動。とにかくサウンドが素晴らしくて劇場で観たい、聴きたいの思いが強く、しばらく奥底に眠っていたジャズへの熱い思いがふつふつと蘇るほどの衝撃でした(もちろん監督、脚本、声を担当した俳優さん含め、映画制作陣の力が結集して作品そのものが素晴らしいので、何度でも観たくなるのだと思います)。

もともと連載がはじまった10年前から作者の石塚先生と上原さんの交流はスタートしていたそうです。今回の映画サウンドを作り上げるのに費やした時間が約3年。プレイヤーも宮本大と玉田俊二の音を探すためにオーディションを行い、馬場智章さん(テナーサックス)と石若駿さん(ドラム)が参加。大の破壊的なテナーと、少しずつ上達する玉田のドラムを見事に音で表現。そして沢辺雪祈のピアノはもちろん上原さんが担当。さらに多くの一流ミュージシャンが加わり、全編にわたり息を呑むような演奏が繰り広げられます。その中でも重要なシーンに使われる8分の7拍子の「FIRST NOTE」という楽曲を貼っておきますのでよろしければお聴きください。特にピアノの左手で奏でるランニングベースがかっこいいです♪

小説、そして次のステージへ

原作『BLUE GIANT』のストーリーディレクターであり、映画の脚本も担当する NUMBER8(南波永人)氏が書き下ろした音楽小説『ピアノマン BLUE GIANT 雪祈の物語』。こちらも映画と並行して読みましたが、ピアニスト沢辺雪祈の生い立ちから現在に至るまでの心情が丁寧に描かれていてとても面白いです。原作や映画では描ききれなかった天才ゆえの心の葛藤や周囲の人々との交流、特にドラマー玉田への視線が優しくて泣けてきます。映画は2時間という枠の中で原作を読んでいない人も楽しめるように話の内容を少し変えているのですが、この小説はその隙間をきれいに埋める役割も果たしてくれています。まさに原作と映画化の両方に関わったストーリーディレクターだからこそ書ける物語だと思いました。

『ピアノマン BLUE GIANT 雪祈の物語』
南波永人/著(小学館)

漫画を読み、映画で涙してサントラを聴き、小説で裏側を知ってまた漫画を読みたくなる。先日は映画のロングヒットを受けて「劇場での拍手歓迎」という公式アナウンスがあり、ライブを共有した人々と共にスクリーンの中のバンドJASSに拍手を送る体験をするために、また劇場へ通いたくなる衝動に駆られています。5月8日には作中において『So Blue』として登場する『Blue Note Tokyo 』にて1日限りのスペシャル上映会が行われるとのこと。Blue Noteのサウンド環境を生かして、特別構築した7.1chサラウンドのスピーカーシステムで映画を上映。あの空間で作品を鑑賞するとどんな素晴らしい臨場感だろう・・・想像しただけで鳥肌が立ちそうです。3500円のチケットはもちろん既に完売しているみたいですが、なんとも夢のある企画に拍手を送りたいと思います。

原作コミックも少しずつ読み進め、現在はアメリカ編EXPLORER(英語で探検者、探求者の意味)の終盤に差し掛かっているところ。欧州編SUPREMEではドイツのミュンヘンに単身で渡った大が国籍も思想もまったく違うミュージシャン達と本気でぶつかり合いながら、自身のバンド「NUMBER FIVE」を育てていくストーリーが展開されていましたが、その大がどうして単身アメリカに居るのか?バンドメンバーとはどうなったのか?それは読んでのお楽しみですが、特にクルマや旅が好きな人には響くと思いますよ、大の新たなる挑戦の日々。

『BLUE GIANT music by 上原ひろみ』
(YAMAHA)

そして4月末に予約していたヤマハ出版の楽譜集が届きました!上原ひろみさん作曲の「FIRST NOTE」「N.E.W」「Count on me」はピアノ、サックス、ドラムが採譜されたバンドスコアとして。そして「FIRST NOTE」「BLUE GIANT」のピアノソロアレンジも後半に掲載。いずれも目の回りそうな難曲ばかりでそう簡単に弾けるレベルではありませんが、サントラを聴きながらバンドスコアを目で追うだけでもすごく勉強になると思います。Spotifyなどのプレイリストには作品で登場する歴代ジャズミュージシャンの名演奏を集めたプレイリストもたくさん登場していますし、映画の続編も待ち遠しい。

かつての自分がそうだったように、ジャズに出会いその魅力に取り憑かれる人がこの映画で増えると思うだけでワクワク。原作の石塚先生も、この作品を通してとにかく若い人にジャズの素晴らしさを知ってほしいとインタビューで答えておられました。英語、フランス語、ドイツ語、インドネシア語の翻訳版も出ているみたいです。そして主人公・大が目指す最終地はジャズの本場・ニューヨーク。果たしてどんな展開が待っているのか。日本発のジャズコミック『BLUE GIANT』のステージは、これからもまだまだ広がりそうです。

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https://hocoto.jp/ マネージャー hana 記
2023.5月


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