ホコト随想記(2)アーカイブ

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~私の好きな場所 ブックカフェ その2

ひと月ぶりにこんにちは。マスターこと松野です。
メールマガジン「ホコト随想記」第2回をお届けします。

先日、大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴いてきました。指揮は尾高監督。たいてい一人で行くのですが、今回は久しぶりにマネージャーと一緒に、フェスティバルホールの赤い階段を上り、しばし特別な空間に身を浸してきました。童顔なのにおじいさんのようにトボトボ歩く藤田真央青年がピアノの鍵盤に指を置き、ベートーヴェンの協奏曲第4番を静かに弾き始めると、世界が一変して背筋に電流が走りました。至福…。これがあるからコンサート通いはやめられないと、あらためて感じました。
♪♪♪♪♪

前回はブックカフェについて、私がその存在を知ったきっかけから、自分なりのイメージが固まってくるまでのことを、3つのお店との出会いを紹介しながらお話ししました。

読んでくださった方から、それらのお店に行ってみたくなったというメッセージをいただきました。ありがとうございます。3つのお店のうち、BOKUとキイトス茶房は2019年にそれぞれの歴史を終えました。今も営業しているのは札幌のワールドブックカフェです。街の中心、大通公園から近いのですが、ちょっぴり奥まったところにあるせいか静かで広々しています。札幌はこれからいい季節ですね。ぜひ行ってみてください。

さて、ブックカフェについての私のイメージとして、「生きた本棚」が主役として大切に扱われているカフェだという説明をしました。生きた本棚というのは感覚的な表現ですが、イメージは伝わるでしょうか。本がたくさんあればいいというのではなく、ピシッと綺麗に並んでいればいいというのでもない。数はほどほどでいいし見てくれが多少デコボコでもいいから、そこを手入れしている人の工夫と思い入れが感じられる本棚がいいなあと思うのです。本の置き方見せ方もそうですが、肝心なのは本のチョイスと組み合わせですね。

例えば「クルマ」というテーマで棚を作るとしたら、いわゆる自動車の本だけじゃなく、クルマが登場する小説や絵本、免許の取り方や地球環境の本、『まさかジープで来るとは』という現代俳句の本だっていい。いろんなジャンルから面白い本を選んで、集めて、組み合わせていく。するとその人の個性がおのずと棚に表れてくるでしょう。それを選んだか!と突っ込みたくなるのもいいんじゃないでしょうか。

もう一点、これは当たり前のことなんですが、ブックカフェは基本的に「カフェ」なんですね。つまり人が集まり、飲食を楽しみ、しばし滞在する場所なんです。その「カフェ」と「生きた本棚」を掛け合わせたところに生まれる何とも言えない豊かさ、楽しさ。くつろぎ感と緊張感が共存する空気感。これこそがブックカフェの魅力だと思っています。体験した人にしかわからないかも知れませんが。

ということは、ブックカフェを自分でやるなら、カフェとして一定のレベルのものをお出ししなくてはいけない、飲み物にせよ食べ物にせよ、美味しくて安全なものを提供しなくては、と強く思うようになりました。しかし、料理人どころか料理経験もあまりない図書館勤めの公務員にとって、それは遥か彼方の幻のように思えてなりませんでした。

ブックカフェ、いいな。やりたいな。
だけど一体そんな日が来るんだろうか…?

そんな思いを持ちながら、図書館員として仕事をこなす日々が長く続きました。「本のあるカフェ ホコト」がオープンするのはまだまだ先のことです。

次回はブックカフェにもいろんなタイプがあるということをお話しします。いくつかお店の紹介もできればと思います。
♪♪♪♪♪♪

さて今回も音楽をひとつご紹介しましょう。
初夏に向かう華やかな生命の季節に合う音楽です。

吉松隆・ピアノ協奏曲「メモ・フローラ」から
第3楽章「bloom」

万華鏡のようなカラフルな響きと、景色がどんどん変わっていくスピード感が心地よく、終わったあと「今の美しい時間は何だったんだろう」としばらく呆然として、余韻が消える前にまた聴きたくなる、そんな音楽です。

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田部京子・ピアノ、藤岡幸夫・指揮、マンチェスター室内管弦楽団による演奏でした。

田部さんのリサイタルを聴いたことがありますが、柔らかく底光りする音色に魂をつかまれ、最初のワンフレーズだけで別世界に引き込まれる気がしました。そのときも始めは吉松さんの作品で、メンデルスゾーンやシューベルトも絶品でした。

カフェのBGMでも田部さんの演奏をよく選んでいました。グリーグの「アリエッタ」やエルガーの「愛の挨拶」など、毎日のように流していましたから、ご記憶の方がいらっしゃるかも知れません。

♪「アリエッタ」
https://youtu.be/Gg4-akj6FTY

♪「愛の挨拶」
https://youtu.be/KbY7WLzZTm4

何拍子かわかりにくい曲が大好きなマスターこと松野がお送りしました。
おつきあいいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。

2022年4月17日 メルマガ配信

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