ホコト随想記(3)アーカイブ

目次

〜私の好きな場所 ブックカフェその3〜

ひと月ぶりにこんにちは。マスターこと松野です。
メールマガジン「ホコト随想記」第3回をお届けします。


先日、久しぶりにチーズケーキを作りました。お菓子作りの道具がやっと整理できたので、冷蔵庫のクリームチーズが新鮮なうちにと思い、焼いてみたのです。レシピを確認しておきたい気持ちもありました。店を閉じて3ヶ月、細かな手順を忘れかけていることに我ながら驚きましたが、何とかそれらしく焼き上がりホッとしました。
違ったのは、作ったあとの疲れが少ないことです。店ではキレイに仕上げなきゃという意識が強く、うまくいかないとガックリ来てましたが、家だとその点気楽だからでしょう。これから時々焼こうという気になりました。おうちバージョンのレシピもアップしようと思いますので、その時はどうぞよろしくお願いします。

***

前回はブックカフェの魅力について、私なりの言葉でお話ししました。
こんな表現をしましたっけ。
「カフェ」と「生きた本棚」を掛け合わせたところに生まれる何とも言えない豊かさ、楽しさ。くつろぎ感と緊張感が共存する空気感。
これはもう、わかる人にはわかる、わからない人にはわからない表現かもしれません。曖昧というか微妙というか。そもそも「好き」を言葉で説明するのは難しいことですから、気にせず続けていこうと思います。

さてブックカフェの魅力を知った私は、機会あるごとに各地のブックカフェに足を運ぶようになりました。今回はそのなかから特に印象的なお店をいくつかご紹介します。
以下の文は、「本のあるカフェホコト」の店舗設計を頼んだ建築士あてに、ブックカフェとはどんなカフェなのか説明するために書いた文がもとになっています。自分なりにタイプを設定し、代表例を挙げています。そんな見方もあるかな、くらいに軽く受け止めていただけたらありがたいです。

***

本棚のあるカフェは無数に存在するが、そのなかで本棚が主役級の存在感をもち、よく手入れされ、お客さんにも親しまれているようなカフェを私は「ブックカフェ」と理解している。いくつかのタイプと、代表的な例を挙げる。

A. 図書館タイプ
カフェのなかに本棚があり、自由に本を選び店内で読めるタイプ。
基本的に本の購入はできない。それだけに心穏やかに滞在を楽しめる(本屋さんで本を買わずに出ると何だか悪い気がしてしまうという個人的事情による)。

東京・恵比寿にある「写真集食堂 めぐたま」は、飯沢耕太郎氏提供による圧倒的な写真集のコレクションと、ヘルシーで美味しい「日本のおうちごはん」が特徴。空間もよくデザインされていて美しい。個人的に大好きなお店。
https://megutama.com

B. 書店タイプ
書店とカフェが一体化しているタイプ。
本は売り物なので、テーブルで読むのは買ってからにしてねというスタイルが多いが、例外もある。

大阪・天王寺にある「スタンダードブックストア」は、このタイプの人気店。
移転する前の心斎橋のお店に行ったことがあるが、本や雑貨のセレクトが面白いせいでつい買物に熱中してしまい、カフェを楽しむ余裕がなくなってしまった。お金と時間のあるときにまた行きたい。
https://www.standardbookstore.net

C. ギャラリータイプ
ブックカフェとギャラリーが一体化しているタイプ。
アートを味わい、本を味わい、メニューを味わうという三段構造になっている。

大阪市北区にある「itohen(イトヘン)」はこのタイプの代表格。売上げの一部で若いアーティストを支援する運動をやっている。訪ねたときは他にお客さんはおらず、キーマカレーの仕込み中だった。カレーの匂いに包まれながらコーヒーを飲み、写真展を鑑賞して本も買い、大満足で帰ったのだった。
http://itohen.info

D. 複合店タイプ
ブックカフェと何かのお店が一体化しているマルチなタイプ。

「ブルックリンパーラー」は新宿、博多、大阪・心斎橋にあるお洒落なお店。「人生における無駄で優雅なもの、ぜんぶ。」というコピーがまず魅力的。ブルーノートジャパンの運営だけにライブが充実している。ブックディレクターの第一人者・幅允孝さん率いるBACHが構成した本棚も充実している。食事もお酒も充実している。足りないものは静けさとワビサビくらいか。
https://brooklynparlor.co.jp

西宮にある「ネッツテラス夙川」はクルマを買えるお店。クルマを買わない人も大丈夫、広い店内でお茶を飲み好きな本を手に取ってのんびり過ごせる。通っているとあら不思議ここでクルマを買いたくなる、のかも知れない。
https://www.netzkobe.co.jp/store/shukugawa

E. 交流拠点タイプ
イベントを積極的に開催し、人が交流する場を提供しようというタイプ。
イベントは読書会、トークライブなど本に関するものが主流だが、料理教室や理科実験、占いなどバリエーションは豊富だ。もともとカフェには同好の士が交流する場という性質があり、それを特に大事にしたタイプと言える。

大阪・森ノ宮にある「まちライブラリー@もりのみやキューズモール」はこのタイプのブックカフェの尖鋭的な存在。店内は広くて明るい。壁いっぱいの棚に本があふれ、ピザカフェのカウンターからいい匂いがして、なぜかDJブースがあってFMの生放送してたりと摩訶不思議な空間。カード登録をすれば本の貸出しもしてくれるらしい。
https://machi-library.org/where/detail/563/

F. 本を読む場所提供タイプ
Eとは対照的に、人との交流ではなく、プライベートな時間を静かに過ごす場所を提供しようというタイプ。

東京・高円寺にある「アール座読書館」は私語禁止、孤独と静寂を味わうカフェ。一席ずつ観葉植物や水槽で囲まれた空間が面白い。訪ねたときはずっと満席だったが本当に静かで、水槽の「コポコポ…」音とかすかなピアノのBGMだけがずっと耳に入った。
http://r-books.jugem.jp
 
***

もとの文を書いたのは5年ほど前です。それから世の中いろんなことがありましたね。お店の移り変わりもありました。文には挙げませんでしたが感銘を受けた京都の「さんさか」や「ユニテ」は閉店し、「月と六ペンス」は会員制になりました。
いっぽう、私の近所では、摂津本山に「ブックカフェ ウルム」さん、六甲に「cafe & books かささぎ」さんが誕生しました。さっきの分類で言うなら、ウルムさんはB+E、かささぎさんはFタイプでしょうか。
https://bookcafe-ulm.jp
https://cafebookskasasagi.amebaownd.com

本好きな人間にとって、本が大切にされているカフェに行くのはシンプルに楽しいことですね。新しい出会いのためにも、自分に立ち還るためにも、ブックカフェで過ごすひとときをこれからも大切にしたいと思います。

今回もおつきあいいただきありがとうございました。
次回は、ブックカフェのメニューについて、「本のあるカフェ ホコト」のメニューにまつわるエピソードを中心にお話しします。
次回もよろしくお願いいたします。

***

先週末、兵庫県立芸術文化センターのオーケストラを聴いてきました。佐渡裕さんの指揮で、バーンスタインゆかりの作品を並べたプログラムでした。どれもよかったですが、特に感動的だったのが、アンコールに演奏されたチャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」でした。この人懐こいメロディはロシアの人チャイコフスキーがウクライナで耳にした民謡なのだそうです。短いスピーチのあと深い祈りをこめた演奏が始まると、一瞬のうちにホール全体が一つになるのを感じました。
ホコトの店内でも流していた曲です。よかったらお聴きください。

♪Youtubeはこちら
https://youtu.be/GkDz4w5cK6s

♪Spotifyはこちら
https://open.spotify.com/track/1ABQEpByJ3F64K1tF1loXv?si=453b9bb867904731

演奏:ニューヨーク・フィルハーモニック
指揮:レナード・バーンスタイン

2022年5月20日配信



目次