図書館みたいなお店ですね、と言われることがあります。嬉しい言葉です。当店にそう思わせるものがあるとすれば、ひとつは小さな店の割に大きな本棚があって、いろんなジャンルの本が並べてあること。もうひとつは他でもない、お客様が醸し出す空気感だと思うのです。
ゆっくり時間を過ごされる方が多いです。本を読む人、書きものをする人、棚の前で本を選ぶ人。厨房から店内を見ると、満席に近いお客様がみなさん読むこと書くことに集中していて、その光景の美しさに心動かされることがあります。道ゆく人から見てもかなり印象的な光景だろうと想像します。
さて、人が何かを読む姿をひたすら捉えた写真集の名作がアンドレ・ケルテスの『読む時間』です。パリ、ニューヨーク、京都など舞台はさまざま。時代にも50年以上の広がりがあります。モノクロの静謐な写真を一枚一枚たどりながら、想像力を働かせ、被写体の心に寄り添うように味わうのも一興ではないでしょうか。
私にとっては、ホコトの本を選ぶときに真っ先に頭に浮かんだ特別な一冊でもあります。
(店長記)
『読む時間』(アンドレ・ケルテス/写真)