こんにちは、BricoLageです。
新学期が始まり、敬老の日、十五夜、秋分の日と、行事の多い9月になりました。「暑さ寒さも彼岸まで」といいますが、9月中もまだまだ真夏日が多いとか。とはいえ、朝晩はすこし過ごしやすくなり、秋の気配を感じられる今日この頃。
それにしても、今年の夏も猛暑日がつづきましたね。みなさんはどんな夏を過ごされましたか?
わたしは、京都にある「堀川新文化ビルヂング」で開催されたワークショップ「プレス機で小さな版画を刷ってみよう!」に参加してきました。
6月22日~7月21日まで、版画家 吉浦眞琴さんによる展覧会『偶然の兆し』が開催され、その関連のワークショップとして吉浦さんから銅版画の技法であるドライポイントを教わり、オリジナル蔵書票をつくるというもの。
会場の「堀川新文化ビルヂング」を訪れるのは初めて。1階には書店やカフェ、印刷工房、2階にはギャラリーとイベントスペースが。気になる本をみつけたら、隣のカフェでゆっくりと読書ができ、アートやクラフトを気軽にたのしめる······こんなすてきな場所。展覧会は、書店やカフェの店内、ウィンドウディスプレイや階段の壁面などを展示スペースに、ビル全体で作品を鑑賞できる展示企画になっていました。
さて、ワークショップでは、今回展示されている作品の版画技法ドライポイント(版材を鋼鉄製のニードルで直接ひっかき、インクをつめ、紙に刷りとる方法)で、オリジナル蔵書票をつくりました。今回初めて蔵書票というものを知りましたが、みなさんはご存じですか?
蔵書票とは、本の持ち主を示すために独自の図柄が描かれた小さな紙片のことで、本の見返しに貼るもの。ラテン語で「エクスリブリス(Exlibris)」といい、「わたしの蔵書のなかの一冊」という意味で世界共通語になっていて、日本では「蔵書票」あるいは「書票」と呼ばれています。その歴史は古く、15世紀中頃 ヨーロッパに始まり、日本には1900年(明治33年)チェコの画家エミール・オルリックにより紹介されました。小さな紙に意匠を凝らし、図案の美しさ、エッチング技法版画の精緻さから、そのもの自体も紙の宝石として世界的に愛好されているんだとか。
吉浦さんから蔵書票のはなし、ワークショップの流れを聞いてから、まずは製版のために紙に下図を描き、その上に透明塩ビ板をのせて油性ペンでなぞり写しを。版画は反転するので、版の裏面をニードルでひっかいていくのですが、塩ビ板は硬いうえにニードルが滑るので、反転した文字を下図どおりにひっかくのはなかなか難しく「はたして、うまく刷れるのかなぁ······」と不安を感じつつ、製版が完成。
次は刷る作業に移り、完成した版にタンポで全体にインクをつめていき、余分なインクを新聞紙で拭き取ったら、いよいよプレス機で刷っていくことに。ベットプレートに版を置き、湿らせた紙をそっとのせ、フェルトをかぶせたらハンドルをゆっくり廻し加圧すると、オリジナル蔵書票が刷り上りました!
刷ってみると、直接刻まれた刻線の両側のまくれ部分にもインクが絡まることで、やわらかくにじみのある描線が表れていて。本のイラストにイニシャルを、その下に「exlibris」と筆記体で入れたところ、下図で描いたように刷り上っていないものの、これがドライポイントの味わいなのかもしれません。
吉浦さんも、以前は白黒の銅版画を制作されていたけれど、今回の展示では今まで制作していなかった色のある作品をつくりたいと思い、銅板ではなく塩ビ板を彫って色を重ね「どうなるんだろう」と思いながら制作し、新鮮な気持ちで作品に向き合われたそう。偶然表れた線の表情や重なり具合など、とても趣きのある展示作品でした。
わたしにとっては学生のとき以来の版画、といっても 5cm×8cmの小さなものでしたが、今年の夏のたのしい思い出のひとつになりました。
堀川新文化ビルヂング | 堀川の暮らしに、豊かさを。日常の延長線上に 「文化のプラットフォーム」を。 (horikawa-shinbunkabldg.jp)
二十四節気が9月22日に「秋分」へと変わり、これからすこしずつ日が短くなって、秋の夜長へ。
わたしが今年の秋の夜長にじっくり見たい本が、『佐野繁次郎装幀集成 西村コレクションとして 増補版』(みずのわ出版)。
あるとき、ブックディレクター 山口博之さんのInstagram ストーリーズから見覚えのある手書き文字が目に留まり、「あっ、佐野さんの本だ!」と。調べてみると、今年6月に出版されたことを知り、さっそく書店で取り寄せました。
佐野繁次郎さんとの出合いは、20年前の名古屋「:BOOKS(コロンブックス)」。ふらりと立ち寄ったとき「sano100展 佐野繁次郎の装釘」開催中で、独特な手書き文字や素描、センスあふれるコラージュに心魅かれました。そのときに購入した小冊子はもちろん、イベント告知ポストカードも大切にとってあります。
小冊子には、堀井和子さんが好きな佐野本について寄稿されていたり、大阪出身の佐野さんが佐伯祐三と交流があったこと、1938年頃 渡仏したときにマティスに師事したことを知り、わたしの「好き」がつながっているなぁと思ったものでした。
この本をぱらぱらとめくり、ながめる······そんなくつろぎ時間をたのしむつもり。みなさんも秋の夜長、思い思いのくつろぎ時間を過ごしてくださいね。
さて、次回のコラムは、初冬にお届けする予定です。どうぞおたのしみに······。
[第8回・2024年初秋 ブリコラージュ 記]
<プロフィール>
BricoLage(ブリコラージュ)
大阪生まれ。神戸在住。
15年間、ライフスタイルショップに勤務。
10年ほど前、からだの不調をきっかけに、アロマテラピーやメディカルハーブ、バッチフラワーエッセンスを学び、日々のくらしに取り入れている。
2016年より、BricoLageとして活動(アロマハンドトリートメントやポストカード・クリスマスカード制作)。
BricoLageの名前の由来は、フランスの人類学者クロード・レヴィ=ストロースが著書「野生の思考」で提示した、Bricolage(ブリコラージュ)=「ありあわせの道具・材料を用いて自分の手でモノをつくる」から。